私の映画批評

ちょっと心にとどまる映画の感想を私なりに綴っていきたい。

9「モンテッソーリ 子どもの家」 2017年 フランス映画  ミッドランドシネマで上映中  元教育者としては見ておかなくてはという義務感もあり、のぞいてきました。学生時代からその名を知る有名な教育学者で、支援学級の仕事の時も、彼女の考案した教具を参考に自分の教材づくりに使わせてもらっていました。ただ、実際の教室は見たこともなく、それはそれは新鮮でした。2歳から6歳の子どもが通うフランスの幼稚園が舞台。クラス分けもなく、小さい子は大きい子のすることを間近に見ながら、所作を覚えていきます。決まったカリキュラムがあるわけではなく、子どもは自分で決めた「仕事」に取り組みます。基本的に大人は手を出しません。ただ、ずっと放っておくわけではなく、アドバイスはするしお手本も見せます。またまちがったことをすれば注意もします。その時の大人のことばがけが絶妙で、教師のセンスがそこで問われます。子どもはけっして「小さな大人」ではなく、自由な意思を持つ社会の一員であること、そして平和で寛容な世界のつくり手であることを再認識させてくれます。 210222

8 「すばらしき世界」監督 西川美和 主演 役所広司  
 13年の刑期を終え、社会に復帰してきたある男のたどるいばらのような道が見るものの胸を締めつけます。短気ですぐカッとなってしまう性格を押さえつつ、でも見過ごせない怒りのやり場に葛藤する男を役所広司がものすごい迫力で演じます。そんな男の道筋をドキュメントに撮影しようとする若者が段々仕事を離れ、男の本心に迫る過程が秀逸です。西川監督の作品はどれも人間の本質の切り取りにするどいまなざしを向けていますが、これほど分かりやすい人間像はなかったかもしれません。 210220

7「わたしの叔父さん」2019年のデンマーク映画、
 静かな牧場で暮らす娘とその叔父さん。娘は幼い頃両親を亡くし、叔父さんに引き取られますが、進学を予定していた時叔父さんが倒れます。その後進学をあきらめ、牧場を手伝うことになります。その淡々とした毎日が画面のほとんどを占めます。監督は小津安二郎を尊敬しているらしく、日常の何気ない描写を大事にしているようです。途中に恋愛場面があったり、進学を夢見ていた獣医の仕事に引かれたりする場面もありますが、結局元の日常に戻ります。 介護をしながら、牧場の仕事に邁進しますが、娘も決していやいや仕事をしているわけではなく、覚悟を決めたさりげない表情がとてもさわやかでした。 210216

6.「シェイプ・オブ・ウォーター」 2018年 アメリカ 監督 ギレルモ・テル・トロ
 予告で主人公の女性が手話を使い、怪獣らしき人物?と対話している場面を見て、これは見なくてはと、アカデミー
賞発表前に勇んで出かけました。案の定超満員で評価の高さを思い知らされました。作品賞をとったおかげで、ストー
リーはほぼ公表済みだと思います。R-15指定になっているので、それらしきエッチな場面もありますが、ストーリー
の流れの中ではどうってことない感じでした。異星人?との距離がだんだん縮まっていくのはETの雰囲気もあり、連れ
出す場面などはそのままでした。ミュージカル場面も入っており、監督の遊び心満載の傑作です。   180303

5.「パディントン2」 2017年 イギリス・フランス合作  監督 ポール・キング 
 実写版というとダサく、子どもだまし的ではないかという先入観があり、一作目も期待半分で見ましたが、意外と
しっかりした仕上げで感心した記憶があり、今回も付き合うことにしました。すでにロンドンのファミリーの一員
になったパディントンは街のアイドルにもなっています。その彼がかつてとても世話になったおばさんの誕生日プ
レゼントを見つけたところからドラマが始まります。チキチキバンバン、モダンタイムス、バックツーザフィーチ
ャー、雨に唄えば等々の場面を彷彿とさせながら、けっこうスリルとユーモアにとんだ楽しい場面が展開します。
素になって味わえる良品です。                                180203

4.「キングスマン2 ゴールデンサークル」 2017年 イギリス 監督 マシュー・ヴォーン
 前作以上に活劇満載のサービス映画。ややこしい陰謀もなく、勧善懲悪の分かりやすい内容でいつのまにか終
わっていた感じ。紳士服の仕立てが表の顔なので、アクション中もパリッとしているのはジェームス・ボンドを
意識してか。何か「インディー・ジョーンズ」に対する「ハムナプトラ」のように、B級映画と思わせつつ、本
家を食ってしまうパターンがこの作品にも言えそうだ。                    18.01.18

3,「嘘八百}  2018年 日本 監督 武正晴
 古物商(中井貴一)と落ちぶれた陶芸家(佐々木蔵之介)が、大物鑑定士に仕返しを企むコメディー仕立ての展開。
が、しかし「スティング」などのスマートなどんでん返し等を期待してみると裏切られる。それなりに利休もど
きを追求した茶器づくりなどがんばっている場面もあるが、空回りに終わっている気がする。二人の家族のゴタ
ゴタも興ざめに近い。                                   18.01.09

2.「奇跡のシンフォニー」2007年 アメリカ 監督 カーステン・ジェリダン
 久しぶりに途中からウルウルしてしまった。出生時から養護施設に預けられた少年(フレディ・ハイモア)は、
音に敏感で両親の声さえ聞こえてくるという。とうとうその声や音に導かれて町を彷徨うことになる。途中から
両親の出会いや別れが描かれ、少年の行動と微妙に絡んでいくことになる。聞こえる音が音符に変わり、楽器の
音で表現される。自分が楽器や演奏と縁があったことも影響しているのかこの辺からウルウルが始まる。やがて
オーケストラの演奏と共にエンディングに向かう。心洗われる作品でした。           18.01.11

1,「2001年宇宙の旅」1968年 アメリカ 監督 スタンリー・キューブリック

 これまで何度も見ながらたいがい途中で記憶を失い、いつのまにか終わっていてなかなかストーリーを語る
ところまで行き着かなかったことが多かった。最近ようやく最後まで見れたので、感想を綴ってみたい。
 といっても正直よく分からなかった。冒頭の猿人たちが木の枝を道具にして目覚めていく人類の夜明けと宇宙船
のつながりは何となく分かる。そして両方の場面に出てくる黒い塔も何かの象徴だろう。
 木星探査の宇宙船の中での人工知能との掛け合いはまさに今時の話題を先取りしているようだ。木星に着いた?
宇宙飛行士(キア・デュリア)は自分の未来と過去をそこに見る。宇宙空間が時空を超えてしまう状況を表している
ようだ。それがラストの星と生命誕生のセットにつながる。でもやっぱり何が言いたいかよく分かりませんでした。
                                               180112