ひろば通信 2001−3

◇まだ底冷えする日もありますが、やっと日差しが春らしくなってきました。今年は苗の成長が悪く、普通ならとっくに植え替えられるはずのパンジーやサクラ草が、本当にミニサイズのまま。そのくらい寒かったのかもしれません。それでも、梅が咲き誇り、月末には桜の季節。枝のあちこちにはふくらんだ芽が見つかり、まただんだんと外にいる時間が長くなってきました。もうほとんど空間のないわが家では鉢を入れ替えるだけのさびしい作業ですが、何とか春の季節に答えてみたいものです。
◇先日東京方面におもちゃ探索のミニ旅行に行ってきました。職場のくすのきで試みた万華鏡の教材が気に入り、さらに深めてみようとその専門店と博物館と称する所をのぞき、高価で豪華な万華鏡の世界を堪能し、その足でいつもの吉祥寺のニキティキで新しいおもちゃを探しました。いつもならすぐにこれはという作品が見つかるのですが、今回はどうにも決まらず、後で紹介するキュビオのセットだけにしました。これはもしかしたら、ひろばにはそれだけたくさんのコレクションが集まってきたということかもしれません。それは次の場所でも感じました。まだ雪の残る軽井沢のおもちゃ博物館のことです。ここではぜひ本物を見たかったドイツはエルツ地方のおもちゃ職人たちの作品が展示されているのです。マイスターという特別の称号を与えられた仕事ぶりは有名なくるみわり人形、ロウソクの炎で回る精巧なツリー、ろくろで作るミニチュア動物とこれぞ木のおもちゃの真髄とかつてものすごくあこがれていた世界そのものでした。今の自分の仕事と比べるべくもないのですが、古さをまったく感じさせないその伝統の強さを少しでも学びたいものです。
 さて、そこでもひろば用の作品を探しましたが、やはり決まらず断念。迷ったらやめるという私流の買い物パターンで、次の機会を待つことにしました。そこでじっくりながめたくるみわり人形は、ダンス好きな娘も意識していつか自分の作品としてマイスターさんたちにチャレンジしてみるつもりです。
◇前号で書いたように「雪の女王」はまだ未完成ですが、氷の城のイメージはできあがりましたので、ご覧下さい。このお話シリーズはどんどん貯まっていきますが、ひろばではなかなかゆっくりと公開できません。でも先月協力したイベント多治見のまなびパークでは、それぞれの作品の前で絵本を片手にしたお話おばさんが紹介してくれてとても評判だったようです。木のおもちゃは触れられ、さわられて始めて生きてくるという感を強くした次第です。

◇ひろばでもファンが増えてきた佐々木正美さんの新刊『続子どものまなざし』が出ました。前作も、何度くり返し読んでも示唆に富む話題で明日からの元気をもらえますが、今回はもっと佐々木さんのやさしい肉声が聞こえてくる気がします。前作の質問に答えた形で綴られているのでよけいにそんな感がするのでしょうが、この二冊は子育て中のご両親にはぜひ熟読してほしいものです。

 「子どもは、ありのままの自分を親から信じられて、はじめて親を信じ、自分を信じて、
それから多くの人を信じることができるのです。」     佐々木正美 (福音館書店)

ひろば常連のあきちゃんのおかあさんから
       中日新聞「くらしの作文」より

 市場が好きな息子と時々、一緒に買い物に出かける。彼は真っ先にうどん屋のおばさんにあいさつしてから、魚屋で水槽の泡をじっと見つめる。次は総菜屋の前に立って「いらっしゃい、いらっしゃい」と声を掛ける。お店の人たちとのおしゃべりが楽しいようだ。
 ある日、かしわ屋の前で、チリンと音がした。おばあさんが百円玉を落とし、腰をかがめて拾おうとしていた。彼はとっさに走り寄り、百円玉を拾った。私と一瞬ドキッ。声を掛けようとしたが、黙って様子を見ることにした。
 彼は百円玉を「ハイ」と、おばあさんに差し出した(ああ、よかった)。おばあさんは「ありがとうね」とニッコリ。息子もうれしそうだった。私は息子を疑って申し訳ないと思った。同時に親切な行動ができるようになったことに驚いた。
 息子はダウン症で、地域の普通学級に通う小学二年生。皆と同じようにできることは少ないけれど、やさしい友だちに囲まれて楽しい学校生活を送っている。
 「だれかにやさしくされたら、だれかにやさしくなる」の言葉通り、息子は友だちからいっぱいやさしさをもらっていると感じた。

◆今月紹介する新着おもちゃは変則。まずはひろばの壁にとりつけた組み木の「ノアの箱船」これもかなり前からあこがれの作品でしたが、今回思い切って買ってしまいました。

 

 
 模倣は簡単ですが、そのデザインのセンスを頭の隅においておきたいと思います。
 後は東京で仕入れた万華鏡のいくつかとキュビオのセットです。流れるビーズの不思議な映像をお楽しみ下さい。キュビオは車用のブロックがたくさんあるので、それらと合わせて遊べば楽しい世界が広がるはずです。

◇この時期は年度のしめくくりで、つい区切りを意識してしまいますが、以前のように文集づくりをやめてしまってからは、この通信が唯一の足跡になっています。皆さんの声もぜひ掲載したいので、お便り、メールをお待ちしています。