ひろば通信 04-12
ひろば 19日 工房 4日
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     2004年12月16日(木)
◇今年のクリスマス飾りがようやくそろってきました。毎年少しずつ趣向を変えていますが、今回は新旧いろいろとりまぜてあります。もっともそれを知っているのは私だけかもしれませんが。ただ、まだ作りかけの作品もあり本当に毎年ぎりぎりの仕事を繰り返しています。それにプレゼントづくりも・・・。
◇今月のひろばが今年最後のイベントになるかと思いきや、たいへんな仕事が舞い込んできました。
 クレヨンハウス発行の雑誌『子ども論』の編集部より座談会のご招待があったのです。タイトルは「早期教育」について。以前クーヨンに載った「知育玩具」についての記事が目にとまったようです。そして座談会のお相手は何と佐々木正美さんと小児科医の小西行郎さん。この通信で何度も紹介しているように佐々木正美さんは最も尊敬している方のひとり。講演や著書でほとんどおっかけをしているくらい身近な方ですが、いっしょの席で話せるとは思ってもみませんでした。
 ただ、教員になったばかりの頃一度佐々木さんと直にお話ししたことがあり、それ以来のご縁になっています。当時私の「ことばの教室」に通っていた勉君という子がたまたま佐々木さんの指導も受けており、自分の勉強も兼ねて会いに出かけたのです。そのときどんなコメントをいただいたかはっきり記憶にはありませんが、みんなといっしょにやっていくのが大事ですよと、とても安心感を持たせてもらった印象があります。その当時自閉症の診断を受けた子どもたちに対してどういう指導をするか、ようやく専門的な議論が活発になっていましたが、現場ではいろいろ迷うことが多く、私のような通級制の学級はある意味でもってこいの場だった気がしています。
 みんなといっしょに授業を受けながら、苦手な場面やできないところは場を変えて、じっくり補っていく、もしかしたら今に通じるとても先進的なことを試みていたのかもしれません。
◇メンバーから考えてタイトルになる早期教育については、おそらくそんなに急がなくても、子育てはのんびりいきましょうという結論になる気がします。私も今はそう思いますが、しかし、最初に娘が生まれたときはもしかしたら率先して早期教育をしていたかもしれません。何せ生まれる前から本屋に行き、赤ちゃん絵本を用意して、ちょっと「アウアウ」と喃語をしゃべり出せば、録音して言葉になるのを記録し、テレビは押入にしまい、始めの言葉は何とか「パパ」にしようとお風呂で必死に教えていたのですから。結局はっきり分かった言葉はパパでもママでもなく「ワンワ」だったのですが。
◇その子にいいおもちゃを与えたいとおもちゃ探しをして、ヨーロッパのすてきなおもちゃを見、ほしいと思いつつ値段を見てあきらめたところから、自分のおもちゃづくりが始まりました。はじめは手引きのこぎりひとつで、そして、小黒さんの組み木に出会い、電動糸のこを使う世界へ、そして、オリジナル作品が生まれ今に至ります。
 今言われる早期教育と自分が試みてきたことの明白なちがいは、ほとんど手作りのものを与えてきたこと。たとえいいと思っても子どもの関心を優先してきたこと。物心ついてからは内政不干渉で、私は自分の作品の世界へ、子どもたちもそれぞれ自分の好きな世界へのめり込み、こちらもこんな子になってほしいという明確な意図はなく、自分で選んだ道をどうぞとのんびり構えていたせいか親離れの早かったこと。
 おそらく早期教育の弊害として言われるのは何でも人より早く、できれば一番にと成長の当初から競争原理に親子でとらわれてしまうことでしょう。結果ばかりが優先して肝心の日々の出来事の楽しい積み重ねがなおざりにされてしまうことかもしれません。すでに子どもが離れてしまった立場からは、その日々こそ大事にしてもらいたいと切に思うのであります。
◇先日あるきっかけで自分の職場の小学校でおもちゃを公開しました。二年生のクラスから招待を受け、国語の教科書に出てくる「かさじぞう」と「おおきなかぶ」のお話セットを披露しました。考えてみたら、制作して以来、こんな形で公開したことはなく、はたしてお話が受けるか心配でしたが、子どもたちはとてもすなおに喜んでくれ、こちらが感激してしまいました。お話セットのシリーズはできたら親子で作品を動かしながらゆったりとその世界を楽しんでほしいという願いで作っていますので、こんな機会はうれしい限りでした。そのとき子どもたちが群読してくれた「きつねのおきゃくさま」をおもちゃにしてみると、つい口約束をしてしまったので、またたいへんな宿題を作ってしまいました。
◇11日に終わった「一日おもしろ学校ごっこ」はいつもより人数が少なくさびしい会でしたが、中身はたいへん濃く、スタッフ一同ぐったりと快い疲れを感じました。私は小黒さんデザインの「ゆらゆら人形」を担当しましたが、このとき学生のボランティアが助っ人に来てくれとても助かりました。この学生、実は小学生のときから、ひろばと工房の常連で今は大学を出た後「作業療法士」の資格を取る勉強をしているそうです。このひろばで触れたおもちゃのことが将来の仕事につながる姿を見て、続けてきてよかったという実感を味わいました。
◇今月の新着おもちゃはクレヨンハウスつながりで、先月紹介した「おもちゃタウン」のカタログから、注文しました。作品は「チーズとねずみ」という楽しいおもちゃ。今年最後のひろばの一日、このゲームで楽しんでみましょう。

◇もうひとつおまけがあります。クリスマスの月にグッドタイミングでしたが、新しいおもちゃ会議の事務局の提案で作家同士のプレゼント交換があり、私は中井秀樹さんに当たりました。届いた作品をご覧下さい。後ろに見えるのは「板つみき」で、これはひろばのと合わせて200枚になりましたので、けっこう大きな作品ができます。
◇さっそく『ハウルの動く城』を見ました。原作がどんなふうにアレンジしてあるか楽しみでしたが、とてもメルヘンの色が濃くなりストーリーは忠実なのに、さらに戦いを防ごうと言うハウルの行動が印象的でした。それに風景のまたまた美しいこと。その場面だけでもいやしになりました。
◇さて、二ヶ月も休暇をもらってしまった2004年もまもなく終演。今年の一年はいろいろな意味で自分にとって記憶に残る年だった気がします。教員の仕事とおもちゃの仕事の狭間で子どもたちと関わっていく、そのリズムこそいちばん自分に元気をもたらすのだと確信できた年でもあります。海賊キッドに始まった新作、スライド式のおもちゃをサンタや干支に応用しながら、この冬休み、大きな海賊船となぜか大きなベビーベッドの制作が宿題になっています。
 
  では、楽しいクリスマスとよい年を!    

      ◆ ◆来月の予定◆◆
  
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