ひろば通信 09-09
ひろば 20日 工房 12日              

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   2009年9月17日(木)

◇急に秋らしくなりました。確かに気温が下がってきたのはこの頃ですが、夏の終わり頃からすでに雲の形が変わり始め、秋近しという気がしていました。そのくらい今年の夏はなんだか印象が薄かったですね。
 それにしても綿毛をうすくのばしたような秋の雲がこんなに青空に映えるとは、今まであまり気がつきませんでした。花の手入れで地面ばかり見ていたせいかな。

◇そんな雲に気がついたのは、宇治へ出かけ、平等院の屋根に置かれた鳳凰を見上げていた時。まだ汗ばむ日でしたが、池に映る建物と青空に描かれた雲の筋との対比がとてもすてきでした。
 この日は宇治のおもちゃ屋さん「キッズいわき」で友人である西井儀彦さんを忍ぶ展示会がありました。同い年ということもあり、おもちゃ仲間として大切な人でした。ひろばにも置いてありますが、「くるくる劇場」など彼らしい手づくりおもちゃの世界を持っていました。さらに製本の技やジャズのLPのコレクションなど、亡くなってからそのすごさを知るのは本当にさびしいですね。

◇印象のうすかった夏ですが、個人的にはずいぶん楽しませてもらいました。
 岡山のアーちゃんに会う前には倉敷に寄り、大原美術館の見学と美観地区の散策をしました。この場所はかつて、日本おもちゃ会議の創作おもちゃフェスティバルが開かれたところで、会に入りたての初々しい気持ちが思い出されました。西井さんとの思い出にもつながります。
 雨の中4歳のアーちゃんを町に連れ出して『ボルト』を見に行きました。同時に公開中の戦隊ものに誘惑されそうでしたが、何とかセーフ。この頃の映画体験ってどの程度残るのでしょうね。
 自分では映画好きな母親に連れて行ってもらったディズニー映画のシリーズが鮮明に残っていますが、何歳頃だったかは不明。
 そのディズニー映画にスタッフとして大きな関わりを持ったメアリー・ブレアの展示会も上京した折り、じっくり見てきました。アニメになる前のイメージ画ですが、完成されたアニメよりむしろ彼女の絵の方に引かれるものがありました。ひとつ残念だったのは、前に自分も作品化した『ちいさいおうち』の絵が、かなり原作とずれているように感じること。それ以外はまさに色彩の魔術師とも言えるタッチに魅了されました。

◇この夏大きなイベントがないことを幸いに黒澤明の映画をたくさんレンタルしました。その数のべ12本あまり。一本一本ていねいに見始めましたら、どの作品も見応えたっぷり。これまでどうしてしっかり見てこなかったのか後悔しきり。でも、何事も思い立ったときに向かうのがいちばんですね。

◇時間のあるのを幸いに娘から回ってきた『1Q84』を一気に読みました。村上春樹の作品は黒澤映画と同様中途半端にしか付き合ってこなかったので、今回その小説の組み立ての面白さにすっかりハマってしまいました。続けて『海辺のカフカ』から『ノルウェイの森』まで一気に読み、困ったのは重松清シリーズとの共存。文体も主題も異なりますが、その描かれた世界はどちらも心に残ります。しかたないので今は並行して読書。忙しい秋です。

◇夏の制作はほとんどワークショップの準備に費やされました。最近のメニューは糸のこで切るだけでなく、その後の組み立ても時間がかかるものになり、そのための材料を前もって切り分ける仕事が必要です。ただ、それだけ準備してあると年齢が低くても、制作を楽しむことができます。子どもたちの満足げな笑顔を期待して準備しました。
 最近の子どもたちはどちらかというとチャレンジ精神が弱い傾向にあるようです。失敗したらどうしようと、やる前から逃げ腰で、しかも一回失敗するとなかなか立ち直れません。こうしたことはあまり一般化して言えることではなく、まったくの私見に過ぎませんが、よく同様の意見が聞こえてきます。
 その傾向の原因がどこにあるか、それこそしっかり分析できていませんが、大人と子どもとの関係、親子や教師対子どものあり方が影響しているのはまちがいないでしょう。
 佐々木正美さんのいう過保護とはちがいますが、今の子どもたちには成功体験をうまく生かして自信を持たせ、その上でチャレンジさせて行きたいと考えます。私の関係するワークショッブもその流れの中に位置づけています。

◇一方、毎月の工房では、それこそチャレンジ精神いっぱいの制作風景が見られます。糸のこで切るだけの組み木に飽き足らず、以前テレビ番組で紹介した「観覧車」や「飛行塔」に何ヶ月もかかって取り組んでいる面々がいます。ひろばで人気の「ねずみくんハウス」に挑戦して、14ひきせいぞろいの作品を仕上げた方もいます。ワークショップで体験した子がこうした場面につながってくれることを期待しています。  残念なことに最近工房の日がすいていることが多く、機械がさびしがっています。体験だけなら何歳からでもいいことにしますので、(わが子には四歳からやらせましたから)ぜひどうぞ。 なお、常連さんは小学三年生からにしてください。

◇「キッズいわき」へ寄ったついでに、新着ゲームを選んできました。この店は、片隅で実際に遊ばせてくれて選ぶことができます。すぐ気に入ったのは『海賊ブラックの決闘』そう、すでにひろばにある『海賊ブラック』のミニ版。二人対戦のシンプルなゲームです。ふいごで船を動かすのは同じですが、大砲もうてるので、もっと盛り上がりそうです。
 もうひとつは、岡山のおみやげに持参したカードゲーム『さわっちゃだめ?!』やっとルールを守って競う楽しみを覚えたアーちゃん。偶然も手伝って自分が勝つことで調子に乗り、繰り返すこと数時間。おかげで娘宅に滞在するほとんどの時間このゲームに費やされたというお勧めもののカードゲームです。 ◇何を思ったか、ファミコンを入手してドラクエシリーズに挑戦しています。テレビゲームはおもちゃのつくり手としては大きすぎる相手で無視したいのですが、このご時世、ゲーム機の反映は広がるばかり。携帯電話と同様持っているのが当たり前の世で子どもたちも多くの時間を誘惑されています。単に取り上げるだけではすまされない状況の中で、どこまで自分で判断してこうした誘惑機器と付き合うか、親も子も日々の過ごし方が問われています。
 これまでまともにゲームに向き合ったことがなく、「くすのき学園」時代に子どもたちがどうしてこんなにムキになるのかつかみきれないまま、ただ没等できる姿にむしろうらやましささえ感じていました。たぶん自分の置かれた状況と無意識に対比して主人公になりきっていたのでしょう。  姫を救う旅に出発してもすぐモンスターにやられて、なかなか先に進めないじれったさに、このままでは一生かかりそうな気配ですが、こうしたゲームをあの当時から万人が楽しめるように構成したクリエーターのセンスには敬服します。
 そのゲームとの駆け引きをアニメ映画で存分に楽しませてくれたのは、この夏いちばん印象的だった『サマーウォーズ』ジブリアニメとはひと味違いますが、かなりの力作。おすすめです。

◇さて、今月のひろばは連休の真っ最中。岡山のアーちゃんも当日出かけてきますので、もしかすると初登場かも。反応が楽しみです。いやハラハラかな。  もうひとつ、ひろばのことを卒論の材料にしたい学生さんのインタビューがあるかもしれません。協力できる方はよろしくお願いします。       

 
 ・からくり恐竜ティラノくん
    この夏のワークショップで初挑戦。かなり苦労しましたが、今後の新しいメニューになる予定です。

   

  ◆◆10月の予定◆◆  ひろば 18日(日)・工房 10日(土)