ひろば通信 11-07

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   2011年7月1日(金)

◇ここ名古屋での梅雨明けはまだまだ先ですが、南の沖縄ではすでに梅雨明け、かと思うと被災した東北ではこれから梅雨入りと、この国土も案外広いのですね。当分海外旅行の予定のないわが家としては、この国のいいとこ探しに出かけたいところですが、今のところ、このひろばの空間がとても気に入っているので、しばらくは皆さんをご招待することに精を出したいと思っています。

◇先月はさっそく小黒三郎さんをお招きして、組み木の特別教室が開かれました。小黒さんといっしょに組み木が作れるとなれば、そのファンにとっては夢のような話。私もその夢を見て早20年以上過ぎました。電動糸のことドリルを駆使して一枚の板をくりぬけば、そこに楽しい動物のパズルが誕生します。苦労して描いた組み木のデザインを惜しげもなく公開して、誰にでも作れる環境を提供している小黒さん(先生と呼ばれるのを嫌われるので)には頭が下がりますが、まだまだ新作にチャレンジしておられるそのバイタリティーにも敬服します。目の前につくり手のお手本があるという恵まれた境遇に感謝しています。

◇さて、当日は作ったサーキュラーパズル(円から描き出した動物組み木でそのままころがして遊べます)を二つずつ包装して、被災地の子どもたちに渡すイベントでした。そこに小黒さんはていねいに一枚ずつ手書きのメッセージをそえていました。
 協力してくれたのは、この地での組み木好きな仲間たち。腕に覚えがある方たちばかりですが、この円を正確に切ると言うのは糸のこでもっとも難しい技術のひとつ。久しぶりの方もいて、かなり緊張していました。当然ですが、力の抜けたスムーズな動きの小黒さんの腕前には皆さん魅了されていました。緊張と脱力のバランス、これは他の作業にも通じますね。

◇被災地プレゼントは、今全国で広がっている運動ですが、外遊びが制限されている子どもたちに、今こそ慰めとなる「おもちゃ」が求められています。 大きなことはできませんが、この組み木プレゼントに合わせて、私も「びゅんびゅんごま」の手づくりセットを切りました。花びらをかたどった形ですが、中心の穴の位置を正確に空けることと太めのたこ糸を用意して、指が痛くないようにすることがポイント。数の目標は四百個で、助っ人なしの作業はなかなかたいへんでした。でも、見返りを求めない無償での作業に、機械を動かしていてとてもすがすがしい気持ちにさせてもらいました。この体験はこれからも生かせると感じました。

◇移動した小鳥のレストランにやっと来客が登場。スズメやキジバトが集まるのに2週間以上かかりました。空から見て単純に判断するわけではないのですね。ただ、いったん集まると朝早くからけたたましいこと。たまには上品なシジュウカラなどが来ないかと期待しているのですが。
 メダカも順調です。地下から庭の水鉢に移したところ、はじめ濁っていた水が、何度かの大雨できれいに浄化されました。自然の力に感心しながら、今せっせと卵集めをしています。
 そばのサンショウの木にはアゲハの幼虫が何匹かえさ探しのお散歩。やがて姿が見えなくなったのでさなぎから蝶になっていくのでしょう。
 こんな自然観察にも適した場所ですが、悲しいことに樹木の名前をあまり知らず、木のおもちゃづくりをしている立場としてははずかしいかぎり。そこでその筋に詳しい姉が寄ったときにいくつか教えてもらい、図鑑で確かめながら名札をかけ始めました。ミニ植物園みたいですよ。

◇虫とのつきあいに閉口しています。何度も丸坊主にされ、何度も蒔き直し、あみをかぶせ、それでも穴だらけになると、いいかげん薬を撒きたくなりますが、そこはぐっとがまん。では、どうするか。ひとつは単純に風通しをよくすること。もうひとつは置き方、植え方の工夫。カタバミなどの雑草も生かし、マリーゴールドやサルビアなど虫がよりつきにくい植物と混在させて植える「コンパニオンプランツ」という手法。これがちょっと効果的です。
 そういう虫たちも実は鳥に食べられ、成虫になるのはほんのわずか。すべては食物連鎖の中にあります。その頂点にいると錯覚している人間が虫にひどい目に会うのは自然の摂理かもしれません。

◇今年は梅が豊作の年らしく、たわわに実った実を収穫したら、ほとんど黒ずんでおりがっかり。聞くところによるとアブラムシの被害らしい。事前に手を打つべきで、あきらめていたら、二度目の収穫。 これは大事にしなくてはと、黒いところもていねいにふき取り、何とか梅干しをつけてみました。うまく成功したら、夏のひろばでおすそ分けします。 (今年は8月も開館の予定)

◇原発の問題が続きます。自分がどういう立場をとったらいいか矛盾だらけの毎日ですが、少なくとも東電や政府の無策だけを非難するのはやめようと思います。だったら何ができるのか分かりませんが、この日々の日常の中で大切にしていることをもっともっと大切にして、後悔のない日々を送ること、人とのつながりこそこの社会の支えであること、そのために自分のできることを探していくこと、少し抽象的ですが、村上春樹の原発に関するスピーチを読みながら、そんなことを考えています。この毎日新聞に載った全文は「非現実的な夢想家として」作家の立場から、この国が立ち直るための「全員」での「作業」を提示しています。かなり長文なので、ひろばに増す刷りしておきます。ご一読を。

◇暮らしを見つめ直すいい知恵の本がありました。母が昔よく買っていた「暮らしの手帖」の特集「暮らしのヒント集」と、昨年ブームだった「断捨離」の文庫本です。どちらもすぐ実践したくなることが満載されています。よく考えれば当たり前のこともたくさんありますが、とりあえず自分のできることからやっていけばいいと気楽に構えて前に進める本です。
 いくつか抜粋してみます。     
    まず「ヒント集」から
・60 いやなことが起きてばかりいるあなたへ。いやなことが貯まると、幸運と交換することができるといいますよ。
・123 今日は一歩ゆずってみましょう。その一歩が、そのまま新しい一歩を進めるちからになるものです。
・289 あなたにとっての上質なものやこと。それを見つめて、育ててあげましょう。美しい暮らしのヒントになります。 ・356 きちんと作られたものを大切にする暮らしをしましょう。衣食住すべてにいえることです。
・364 買い物をする際、それでどのくらいのゴミが出るのか考えましょう。ゴミの量を少なくする工夫を常に考えましょう。
    「断捨離」(王様文庫)から
・断捨離で大切なのは、小さな作業を継続的に繰り返し,積み重ねていくこと。まずは一カ所、いつでも自分が達成感にひたれる「”快”スペース」を完成させる。そして、それをどんどん増やしていく。
・捨てるモノを選別するには、「自分が使うか」という基準でモノと向き合うこと。
・「今の自分」にとって必要・適切・快適だと思うモノは残す。「今の自分」にとって不要・不適・不快だと思うモノは捨てる。 ・断捨離で大切なことは「自分軸」。あくまで自分が”ごきげん”でいることが優先。
・「今、それが必要かどうか」という時間軸が大切。 ・「私が大事にするモノこそ、素晴らしい」モノ自体は何も変わらないのに、使われていなかったり、あるべきでないところにあったりするだけで、その価値が大きく下がってしまう。

◇この2冊に刺激されて、私も今自分なりに意識していることをあげておきます。
・急ぐときほど、ゆっくりとことに当たる。あるいは回り道をして。
・同時進行はできるだけさける。ひとつひとつをていねいに。
・他人の判断に頼らず、最後は自分で決める。
・優先順位は自分の中に。etc  

 最近ちょっと口数が多いので、とりあえずこのくらいしておきます。

◇震災の記事の中で、すでに何万本もの木を植え続けている横浜国立大の宮脇昭さんの見解が出ていました。今必死で撤去されている「がれき」の山ですが、そのがれきを利用して自然の防波堤の支えにするという提案です。巨大なコンクリの壁ではなく、その土地本来の樹木をがれきの上に植えることで「緑の壁」を作り「いのちを守る森」にするという提案にもっと注目してほしいものです。

◇以前読んだ「木を植える人」を読み直しました。東京で上映中のアニメのDVDも注文しました。いつかひろばで公開しましょう。てっきりこの物語は実在の人物の話だと思っていましたが、あくまでも創作であることを今回知りました。でも、世界中でベストセラーになっているということは、この人物の行動に共感・共鳴する人が世界中にいるということ。その人たちが自分の周りで少しずつこの運動を始めたら、地球の緑ももう少し生きかえるのではないでしょうか。

◇久しぶりに映画を見ました。手塚治虫原作の「ブッダ」です。今回はブッダが出家して世の中の矛盾に立ち向かう修行が始まったところまでなので、これからたぶん続編が作られていくのでしょう。ブッダの言葉や生き方が見直されている今日、どうかていねいに映像化して釈迦の伝えたいことを広げていってほしいものです。ジブリのゲド戦記のようにダイジェストにしてもらっては話の本筋を見失ってしまうと思いますので。

◇銀座に行っていた「Alice in Toyland」が戻ってきました。これから手直しして、ミニギャラリーに展示していきます。ひろばや工房のついでにご覧ください。銀座では搬入時に「動きません」と緊急メールが来ましたが、何とか稼働し、たくさんの人にさわってもらったようです。その感想から
・とてもかわいかったです。トランプたちの頭が上下に動いているのがすごかったです。
・しかけがいっぱいあり、ねこが笑っていて動いたり、メリーゴーランドのようなものがぜんまいで回ったりしたところがすごいです。
・ミワくん、お久しぶりです。今回はアリスですね。奥が深いので、これはアリスpart1?チェシャ猫のなまけ具合がいけてます。(中学時代の部活仲間)
・三輪くん、ずっと木の「ぬくもり」を大事にされている事に嬉しくなりました。(大学時代の先輩)

◇「かたつむりオルゴール」が生まれ変わりました。これは岡山の若林さんの作品で、このひろばの開設当時から人気のオルゴール。人柄そのままのゆったりしたかたつむりの動きに忙しい時間をひととき忘れさせてもらえます。そんな方にお勧めです。このオルゴールの記憶がある方はかなりのひろば通です。

◇今月の新着おもちゃは、日本おもちゃ会議の総会で教わったカードゲーム2種。紹介してくれたのは、東京でやはり子どものひろばを開いている小林さん。自宅を開放しているところも一緒ですが、ちがうのは豊富なゲストを招いていること。著名なおもちゃ作家たちが楽しいイベントを提供しています。私もそんなひろばづくりにあやかりたいので、今月特別工作教室を企画しました。ぜひご参加ください。    

  □ 大江委久子さん     布のおもちゃづくり教室      

   期日 7月23日(土)

○午前の部 10:00〜12:00「縫わずに作れる作品」 【例】きせかえミニタペストリーorお弁当ミニタペストリー  どちらも洋服やお弁当の具材を取ったり付けたりできます。  参加費(材料費込):どちらも1000円  持ち物:ハサミ

○ 午後の部 2:00〜4:00 「針と糸で作る作品」 【例】タマゴからヒヨコ:タマゴをひっくり返すと ヒヨコが生まれます。    ネコとネズミのおいかけっこ:ひとつのボデ ィがネコになったりネズミになったり  参加費(材料費込):どちらも500円  持ち物:針と糸で作る作品(縫い針・まち針・白 の縫い糸・ハサミ)

◎申し込みは ひろばまでメールかFAXで  午前・午後とも先着親子10組まで(大人だけの参加も可)

△大江さんプロフィール  保育者・母親としての経験を生かし、89年より布おも   ちゃTA-TA(たぁたん)を主宰して今日に至る。著書に   「かんたん手づくり!楽しく遊べる布おもちゃ」など。    当日著作の販売もあり。

◇新着カードゲームはふたつとも幼児からできる楽しいもの。「ディンゴ」はトランプのうすのろ(なつかしいでしょう)の応用。大人がやるとかなりエキサイトしそう。「風船ゲーム」の方は割れた風船カードをお母さんカードが取り戻してくれるところがみそかな。五人までできるところもひろばにぴったりです。

◇ノンタンシリーズの新作をご紹介します。この絵本で育ったと言っても過言ではないわが家ですが、作者はすでに他界。ところが埋もれていた紙芝居作品が見つかり、遺族の協力で新作絵本に復活しました。内容も新鮮で迫力もあり、このシリーズの閉めに最適かも。そしてまた受け継がれていく予感がします。「ノンタン スープたんたんたん」キヨノ サチコ作・絵 偕成社

◇41回目の「一日おもしろ学校ごっこ」が終わりました。よく続いているものです。はじめ参加者が少なく心配しましたが、ひろば会員などの協力でにぎやかになりました。今回の出し物は低学年が「まほうのふりかけ」高学年が「ビー玉万華鏡」の二本立てに挑戦しました。 「まほう・・」はご存知の杉山亮さんのアイデア。透明の瓶にビーズやビー玉、色紙などを入れて、好きな「まほう」を書くのですが、私はそこに自家製のドライフラワーやハーブを加え、本当の魔女のムードを演出しました。これがなかなか受けて、子どもたちも満足そうでした。  ビー玉万華鏡の方は「趣味悠々」のテキストを参考に大人向けのくっきりよく見える作品に仕上げました。材料もアクリル球を求め、より鮮明に見えるようにしました。デジカメで簡単に万華鏡写真が撮れることにも気づきました。写真は胡蝶蘭を見たものです。つくり手自身が満足しそして作り上げた子どもたちの笑顔こそものづくりの醍醐味ですね。

◇先月の新聞記事はいかがでしたか。小学生が真剣に現実と未来を見据えている姿に、大人としての背筋を伸さざるをえません。そして、6月14日の記事には同じく仙台の六年生のこんな詩が掲載されていました。  

   ない    

   見わたせば     
   なにもない    
   そこにあるはずの    
   風景    
   思い    
   ぜんぶない    
   でも    
   そこにあった    
   ものをとりもどす    
   ために    
   がんばっている    
   ぼくたちには    
   まえとはちがうが    
   必ずいいものが    
   帰ってくるだろう  

 段ボールに描かれたこの詩は、町役場のロビーで被災者を勇気づけているそうです。

PR発達障害の仕事に興味のある方へ  
 いったん退職した関係で、その筋の書物を新規に購入することはあまり想定していませんでしたが、ふと書店でみかけたこの本は、今該当する子どもたちと接している方たちにかなり示唆になる予感がします。協力もアスペ・エルデの会だし、監修も杉山登志郎さんと辻井正次さんでこの地のオーソリティーの人たち。学童期にしぼり本人の上手な生き方への支援を具体的に分かりやすく解説してあります。 「発達障害のある子どもができることを伸ばす」 (日東書院)  

◆7月の予定◆

○ひろば 3日(日) ・16日(土)
○工房  9日(土)(要予約)
○工房特別教室(布のおもちゃづくり)  23日(土)  

その他   
○第二回おもちゃばこフォーラムinなごや     17日(日)・名古屋友の家
私は「びゅんびゅんごま」をもって参加の予定
○第三回子どもワークショップフェスティバル   30日(土)・ナディアパーク
「簡単機織り機で作るテーブルマット」他
◎どちらも早く申し込まないとすぐ定員になりますので、お急ぎください