ひろば通信 11-10

・発行 おもちゃのひろば  
・TEL&FAX 052-834-1986  
・Email toyhiroba@sa2.so-net.ne.jp
・HP http://toyhiroba.raindrop.jp/
   2011年10月3日(月)

◇新しく工房がスタートして半年。いいペース&スペースになってきました。毎朝ウッドデッキでモーニングコーヒーを飲みながら、季節の移り往きを感じています。セミ時雨が虫の音に変わり、空の雲もうろこ雲だったり、掃き清めた庭のようだったり、夏とはだいぶ様相が変わってきました。庭木の成長をはじめとして、そんな変化に気づける時間をありがたく思います。

◇お月見の頃は小さな天体望遠鏡を持ち出して、月面観察もしました。「はやぶさ」ブームには乗り切れませんでしたが、天体へのあこがれは未だにあります。その意をさらに強くしたのは、ベストセラーの「下町ロケット」を読んでから。
 なにげに手に取り読み始めたら、そのおもしろいこと。久しぶりに三度の飯より読書という気分でした。町工場を舞台にしたものづくりの話題に惹かれたわけですが、中身は訴訟問題だったり、経営を巡るごたごただったり、どちらかというと自分には苦手な分野でした。それがものすごくおもしろいのです。  たまたまWOWOWの連続ドラマも放映されており、読み終えてから録画で見ましたが、これもなかなかでした。作者の池井戸さんも撮影現場にいらしたそうですが、自分が創案したエンジン部品がどれだか分からなかったそうです。その程度で書けてしまうのですから、小説家の想像力ってすごいですね。
 読後に作品づくりの拍車がかかってしまったのも、この本の魅力のようです。

◇その結果が職場の支援学級用の教具づくり。相手をしている子どもたちの状態もようやく分かるようになり、役に立ちそうと思う教具をせっせと作って試してもらっています。教具的なものはこれまでもかなり作ってきましたが、「おもちゃ」のつくり手としては、玩具としての作品とは一線をひいているつもりです。教具はあくまで、その子の発達の補助として役に立つもの。その道具を踏み台に数量や言語の伸びにつながることを期待して考えています。
 この文字書きボードは文字を書くことに意欲のあるなっちゃんのために板をくりぬきました。自由に紙やノートに書けることをめざしましたが、文字によっては、途切れてしまうことが難点。本当に入門のつもりで練習してもらっています。その発展でようやく鉛筆を持ち始めたやっくん用のボードも増やしました。なぞれば形が出てくるのでウン?という顔をしています。
 数の学習はどの子もとっかかりが難しいのですが、今低学年の授業でつまずいている子どもたちを見て、量や位取りの学習がとても大事であることを痛感しています。自分の経験では、真四角のタイルを基にした「水道方式」オンリーでやってきました。数と量の関係がいちばん分かりやすいと、今でも考えています。その考えを教具にした作品も紹介します。
  こうした教具、子どもにとってやさしすぎても難しすぎても意欲につながらないのですが、それは与え方ひとつで工夫することができます。数を減らしたり、時間を操作したり、途中から手伝ったり、つまり子どもとのやりとりの中で学習を進めればいいわけです。無理せず、子どもが「やれた」と実感できる体験を積み上げること、それが本当の学習につながっていくと思っています。

◇ひろばにあるたくさんのおもちゃも、その意味では扱い方ひとつで、やさしくも難しくもなるのですが、ともすると「知育玩具」的な発想で、これで遊ぶと脳の発達が促されるというようなうたい文句を聞くことがあります。売り手としては宣伝になるでしょうが、そんな扱いをされるおもちゃがかわいそうです。動きや形、しかけを楽しみ、好奇心いっぱいで遊べば、どんなおもちゃでも発達を促すのは当たり前で、ことさらとりあげることではありません。それより、手でさわり、木の温もりや重みを感じ、動きにうっとりするような感性を育て、さらにそばにいる友だちや大人といっしょに共感を持てるような触れ合いが大切です。
 棚に並んだ、あめ色に変色してきたおもちゃを見て、これまでたくさんの子どもたちに触れられてそんな仕事をしてきたおもちゃたちに感謝しているこの頃です。

◇キューブバズルにこっています。ワークショップで紹介しているイヌ、ネコ、ウサギのシリーズに加えて、恐竜ばっかりの作品を考えました。枠の中に形を収めるのがたいへんで、いい頭の訓練になりました。どんな恐竜がモデルか分かりますか。
 合わせて、別のパズルで十二星座もはめてみました。これもとても苦しかったのですが、けっこう自己満足。ただ、これはペントミノという立体パズルで難易度は半端ではありません。つまり正方形五個の組み合わせからなっており、平面では長方形、立体では直方体に積み上げられます。何せこの道に入ったきっかけとなった作品ですが、三十年近くたってようやく自分でデザインしてみました。教具としても使えるように、はめ具も用意しました。さて、箱に収めてくれるのは誰かな。

◇この季節は種まきのシーズン。パンジーやビオラをはじめとして、春に向けてたくさん蒔きました。順調に芽を出し始めましたが、この双葉の頃の小さな姿は格別に愛しいですね。無垢な赤ちゃんの笑顔に共通するようです。
 今年は思い切って、レモンとユズの苗を購入しました。収穫できるかはもっと先の話ですが、実のなる木が育つことも夢のひとつでしたので、何とか世話をしてみます。最近はまってきたハイボールに自家製のユズをたらし、さらに七輪でいぶした自家製の薫製をつまみにして、ぐっと味わう、飲んべえの夢です。ただ、これまで何本も買ってきたブルーベリーの実がなかなかつかないので、また勉強のし直しです。

◇今年は台風の当たり年のようですね。12号のときはるすを頼まれて、岡山まで孫のアーちゃんの相手に出かけましたが、台風のおかげで婿さんも休暇。結局おじさん二人で一年生の女の子の世話をするというどこかのドラマのような時間でした。

◇工房では宿題作業が続いています。知り合いの幼児園から注文を受けたのはいいのですが、のびのびになり、子どもが夏休みの宿題を残した気分。せっかく注文を受けたのにさばけないのは、昔からの習性。個展のときもそうでした。気安く引き受けるのはいいのですが、ふだん、好きなときに好きなものを好きなだけ作っているせいで、すぐ後回しになってしまうのです。前にも書きましたが、自分のスタンスは気に入った作品があれば自分で作ってもらう、そのためのお手伝いはいくらでもしますよという姿勢です。リフォームの意味もそこにあります。さらに今度糸のこ機械をもう一台増やしました。合計五台の機械がフル回転する、「町工場」のように風景はくるでしょうか。工房の予約もお待ちしています。

◇今月の新着おもちゃは「ブロックス」というボードゲーム。形はキューブパズルと同じですが、これは対戦ゲームで、それこそ頭をものすごく使います。東京の巣鴨にある「ウッドワーロック」という木のおもちゃ屋さんで実際に体験させてもらったゲームですので保証つきです。日本おもちゃ会議の企画でボードゲーム大会の場所を提供してもらったのですが、隣ではいい大人たちがひろばにもある「スコットランドヤード」に夢中でした。さっそく購入した方もいて、ボードゲームの魅力はつきないようです。
 ひろばの棚からもあふれかけていますが、毎年のように新しいおもしろいゲームが紹介されますので、つい手を出してしまいます。ただ、残念ながらほとんどの作品が解説を読むだけで皆さんに手渡してしまっているので、後から感想を聞いている始末。ここはぜひみんなでじっくりゲームを味わう時間を取りたいと今後の企画したいものです。  

◆◆10月の予定◆◆  ○ひろば 16日(日) ・30日(日)  ○工房 8日(土)・22日(土)AMのみ
       ◎ハロウィーン特別企画 29(土)1:00〜4:00 
          小松強志デザイン「魔女とネコのキューブ」づくり(NHK講座より)
          ・小学四年生以上、上限なし 材料費1000円  工房の日と同様要予約
         (11月の予定 ひろば 6日&19日 工房 13日&26日)