ひろば通信 17-03      

・発行 おもちゃのひろば  
・TEL&FAX 052-834-1986                                 
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・HP http://toyhiroba.raindrop.jp/
   2017年3月4日(木)  
 
 ◆◆3月の予定◆◆
・ひろば  5日(日)、19日(日)
・工房  11日(土)、25日(土)

◇やっと梅のつぼみがふくらみ始め、庭ではスノードロップがひっそりと咲き始めました。春は確かに近づいていますが、気持ちは間もなく終了する学校の仕事のことで落ち着きません。36年間の現役生活プラス6年間の講師生活。時間的には充分勤めたかなと思いつつ、この先何をして行くか未だに見えてきません。ずっと続けてきたこの「ひろば」や「工房」の活動はもちろん継続して行きますが、柱が抜けてしまう気もします。ただ、そんなに深刻になることはないですね。残りの人生を楽しみつつ、これから出会う人たちと少しでもその楽しみを共有できたらと思っています。

◇6月の銀座のアートイ展は今のところ自分の創作のいちばん大きなテーマになっています。たまたま思いついた作品とテーマを無理矢理こじつけるというパターンでこなしてきましたが、今回は本当に難しく、「響き」というこれまでまったく挑戦してこなかった音の出る作品がテーマです。
 これもたまたまですが、帰省していた娘がワークショップで作ったというアフリカの民族楽器「カリンバ」がヒントになりました。金属片を親指ではじくとエキゾチックな音色が響きます。調べるとこれを竹板で作った作品もあり、手作り用にも用意されていました。写真を参考に自分でも考えてみました。音の響きは今ひとつですが、楽器として使えそうなので、今度のおもしろ学校のものづくりに紹介できそうです。
 さて、その音色をビー玉のおもちゃに応用できないかと試作を続けています。イメージは何かの映像で見た「水琴窟」の音色。ビー玉が竹に跳ねる音が水音に聞こえるといいのですが。

◇毎年講師を勤めた学校にキューブパズルを置き土産として届けてきましたが、3年も勤めたこんどの職場はもはやネタ切れ。そしたら、ある1年生のもっと難しいパズルはないのという声をヒントに、そもそも私が糸のこを始めたきっかけとなった小黒三郎さんの「十二支のパズル」を思い出しました。これはペントミノという五つの立方体を12通りの形にした超難しいパズル。相当頭がきたえられますが、それを自分なりにアレンジした十二星座のデザインにして置き土産を用意しました。

◇1年生との一年は本当におもしろく、ずいぶん成長したなと思えたり、まだそんなことやってるのとがっかりしたり、まったく自然体の彼らでした。まるで、親戚の甥か姪とつきあっている気分でしたが、とにかく彼らの学校生活の最初の一年をいっしょに過ごせたことは、私にもいい思い出になりました。この出会いを記念して彼らのイニシャルをビー玉のアルファベットにして届けることにしました。30人分はけっこうたいへんでしたが、ひとりずつの顔を思い浮かべながら仕上げました。イニシャルって?という子もいて、ちょっと早計でしたが、思い出の記念になればと願っています。

◇「モリー先生との火曜日」(NHK出版)という本をご存知ですか。いつものように小川洋子さんのラジオ番組で紹介されましたが、テーマはALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病にかかった老教授の最後の授業。未だによい治療法が見つかっていない難病ですが、この病気にはつらい思い出があります。新卒から6年間お世話になったS先生が、私が名古屋に移ってからまもなくこの病気にかかり、上京するたび見舞いに参じましたが、徐々に筆談もままならない状態になり、何の手だてもできないジレンマにおそわれたものでした。
 ガリ版をはじめとして教師のノウハウ、手づくり教材の数々、障害児教育の王道そのものを教えてもらいました。最後の別れもこのモリー先生のようにおだやかだったと記憶しています。
 本では、最愛の愛弟子を聞き役にした火曜日の授業が繰り返されます。示唆にとんだ言葉の宝庫で、人生の指針になるかもしれません。
・いかに死ぬかを学べば、いかに生きるかも学べる。・・こんなに物質的なものに取り囲まれているけれども、満たされることがない。愛する人たちとのつながり、自分を取り巻く世界、こういうものをわれわれはあたりまえと思って改めて意識しない。
・私は老化をありがたく受け入れる。老化はただの衰弱じゃない。成長なんだ。・・年をとるまいといつも闘ってばかりいると、いつまでもしあわせになれないよ。・・自分の今の人生のよいところ、ほんとうのところ、美しいところを見つけなければいけない。
・人に与えることで自分が元気になれる。・・こうしてあげたいと心の底から出てくることをやるんだな。
・人類という家族に投資しよう。人に投資しよう。愛する人、愛してくれる人たちとの小さな共同社会をつくろう。
・死で人生は終わる。つながりは終わらない。
・人生に「手遅れ」というものはない。

 この作品のDVDも購入しました。モリー先生役は、名優ジャック・レモンが演じており、彼の遺作となったそうです。

◇今、その小川洋子の作品をはじめとして、4、5冊同時進行で読書しています。一冊ずつ読み上げればいいのに、どれもおもしろいのでしかたありません。また、少しずつ紹介していきます。

◇今いちばん悲しいニュースが「原発いじめ」の記事。福島から避難している子どもたちに、非情なことばが向けられています。同情されこそすれ、いわれなき言葉の暴力に悲しみの限界を超えています。しかも子どもを守るべき立場の教師も加担していたとあっては情けないではすまされません。  BSで「チェルノブイリの祈り」の著者が福島を訪れたドキュメントを放映していましたが、30年前の事故の教訓がまったく生かされていない事実に愕然としました。人の気持ちまで蝕んでしまうその責任をいったん誰が背負うのでしょう。

◇映画「サバイバル・ファミリー」は、さぞおもしろいかと期待しましたが、ちっともサバイバルになっていなくて、養豚場のおっさんに救われる他愛ない話。電気に依存しなくても充分暮らせることを実証してほしかったですが、監督の狙いは別のところにあったようです。
 アカデミー賞にたくさんノミネートされていた「ラ・ラ・ランド」は確かに楽しいミュージカルでした。ただ、前半は歌や踊りが不自然に展開して違和感がありましたが、後半になって話がシリアスになり、俳優の心情表現が胸を打ち、いい作品に仕上がっていました。
 子役がすごいと聞いた「世界でいちばんのイチゴミルクのつくり方」は、インド映画のノリとチキチキバンバンを思い起こすハチャメチャな機械仕掛けが楽しく、ようやると感心。老人と幼児のタグが意味深でした。

◇なつかしい絵本を紹介します。「ラ・タ・タ・タム」というちいさな機関車が活躍する物語。何が気に入ったのか、娘たちに読み聞かせていたはずですが、自分の中でもものすごく記憶に残っている絵本です。しばらく見ないなと本棚をさがしましたが、もしかしたら、6年前の東北大震災のとき、たくさん絵本を送ったので、その中に入っていたかもしれません。絵もマチスを思わせる不思議な空間を表現しているし、白い小さな機関車を思わずがんばれと応援したくなる足跡を見せます。      

◆◆4月の予定◆◆  ・ひろば 16日(日)  ・工房 22日(土)   
          ・卒業生の会 9日(日)