「特別支援学級」ってどんなところ 

 これまで障害を持つ子の学校生活のひとつの場として「特殊学級」とか
「障害児学級」場所によっては「心障学級」など時代や地域によって様々
な呼び方をされてきました。

 しかし、最近は新しい考え方も取り入れられて、そうした障害を持つ子
の教育が「特殊教育」から「特別支援教育」として改めて学校教育法の中
に位置づけられ、学級の名称もこのように統一されました。ただ、各学校
においてはこれまでどおり「なかよし学級」とか「あさがお学級」などの
呼びやすい名称がいろいろ付けられています。

 さて大概の学校ではその教室は職員室や保健室の近くにあり、そこで子
どもたちが元気に過ごしています。人数も様々で、二人ぐらいのところも
あれば、十人を超えるクラスもあります。学年もまたがっているので、低
学年、高学年でクラスを分けたり、学習する内容によって分けたり、運営
する上でいろいろ工夫がされています。

 支援学級の子どもたちは、通常の学級だとすべてのことをいっしょにす
るのは難しいが、支援学校(かつての養護学校)に行くほどではないと、お
おまかに障害の度合いが分けられていますが、実際にはいろいろな事情が
かさみ、単純な線引きはできません。こうした選択は保護者や本人、関係
者、専門家を含めて、将来も見越したいちばん適切な場を十分検討して進
められるべきことだからです。

 とにもかくにも集まった子どもたちはここで多くの時間を過ごします。
国語や算数などの学習も含めて、子ども一人一人の力に合わせ、なおかつ
その子なりのよさを引き出すような内容が教育の主体になります。通常の
学級なら先に教科書があり、その中身を教えることが仕事になりますが、
ここでは先に子どもありきです。ですから、授業の内容も多岐に渡ります
。電車好きな子どもには駅名を利用した学習を取り入れたり、アニメのキ
ャラクターを利用したりすることもあります。つまり子どもの興味や関心
に合わせて、その子がじっくり取り組めるような教材を提供していくのが
ここでの仕事になります。

 合わせて同じ学校の中にある利点を生かして、交流もさかんに行われて
います。ある子は音楽や図工へ、体育や算数の授業に出かけていく子もい
ます。そこでのねらいは学力ではなく、同じ場で他の子を見習いながら過
ごすことが目的になります。教室に閉じこもるのではなく、互いに触れ合
う機会を多く持つことで子どもたちは自然に理解を深めていきます。将来
どんな場で過ごすことになろうと,人との関わりなしではどの子も生活で
きません。少し大げさですが、この学校生活の時間はそのための基盤作り
だと思っています。

 これまでこうした子どもたちと長くつきあってきましたが、一貫として
大事にしてきたのは、子どもたちの持つ「やってみたい、作ってみたい」
という意欲を引き出すような「ものづくり」です。それはパンやうどんと
いった食べ物作りから機織り、工作そして畑仕事と学校の中で出来る様々
な「ものづくり」にチャレンジしてきました。ものづくりのいいところは
それぞれの子どものレベルに応じて、関わる仕事も自由に変えられるとこ
ろです。一人で難しければ、共同でやればいいし、量も加減すればいいわ
けです。結果的にひとつのものが出来上がることが目的で、どの子も同じ
ように出来ることをめざすものではありません。そうした体験を積み重ね
ることで、「やってみたい、作ってみたい」という気持ちが持続され、楽
しく生活していく意欲につながることを期待しています。特にこうしたク
ラスの子どもたちはとても正直です。おもしろいことには心から喜びます
し、つまらないことは見向きもしません。大人の顔色もよく見ています。
こちらが本当に伝えたいこと、学んでほしいこと、味わってほしいこと,
その姿勢をしっかり見ています。 

 支援学級の子に限らず、これからはその子自身のニーズに応じた教育が
求められています。それには教師を含めた大人たちが既成概念を捨て、そ
の子らしさをのばす援助に真剣に取り組まなければなりません。子どもに
選択する力を養いながら、よりいいものを提供していく義務が私たち大人
にある気がします。

                        出典「こどもの図書館」(2008.12)