◆大須小学校の四年一組のみなさんへ   

 よく教室におじゃましました。私の仕事は困っている子の手助けということでしたが、
とてもむずかしいことが分かりました。人に教えるということを長い間やってきて、改
めてこの仕事はむずかしいなと思いました。お別れに、これだけは聞いて欲しいという
ことを書いてみました。  みなさんはこの前2分の1成人式で、両親に感謝し、将来の
自分のことを考えました。とてもいいことだと思います。でもまだ早いかもしれません。
これからじっくり、ゆっくり時間をかけて考えてください。そのヒントになることが、
今学校でやっていることです。これをやりたいなと思うことを見つけること。それが学
校に行っている意味だと私は思います。
 みんなはすごい力を持って生まれてきました。考えてもみてください。オギャーと生
まれて、いつのまにか言葉をしゃべりだし、一人で歩けるようになりました。誰かに教
わりましたか? いいえ、全部自分の力でできたことです。あなたの体の中にそういう力
があったのです。その力を与えてくれたのは誰でしょう。そう、お父さん、お母さんで
あり、そのまたお父さん、お母さんであり、そしてそのまたお父さん、お母さんへとず
うっとつながっています。最後までたどれば、縄文人にまでたどり着くかもしれません。
 二本足で歩き始めた人類は、生きるために道具を作りました。けもののように強くは
なかったからです。寒さをしのぐために衣服を作りました。住みかも作りました。すべ
て生きるためです。何千年もかけて積み上げてきた、そんな人類の知恵があなたの体の
どこかに眠っているはずです。
  人類は言葉や文字も発明しました。子孫に知恵を伝えるためです。学校ではいろいろ
なことを学びます。国語、算数、理科、社会、図工に体育、音楽。いっぱいありますね。
もう、やっていられないと思う子もいるでしょう。でも、その中には、その人類の知恵
がこめられています。教科書に書いてあることは、その知恵のほんの一部です。ですか
ら今はつまらないなと思えることも、よけいなことはひとつもありません。どうして勉
強をするのでしょう。それは人類の知恵を学ぶためと言ったら大げさですが、今はそう
思います。そして、さっき言ったように、その中から自分がやっていきたいことを探す
ためです。
 ところで学校にはもっと大切なことがあります。同じ年に生まれた、同じ地域に住む
仲間と一緒に過ごすことです。それはまったく偶然の出会いです。どこかで何かがひと
つでもちがえば出会わなかった仲間です。しかも、ひとりひとりがまったくちがいます。
このいろんな子がごちゃまぜで、いっしょにいることが大事なのです。学校という場は、
そんなごちゃまぜの子どもたちが、自分の持っている力を探す場所です。みんなの中に
は、眠っている力がたくさんあります。自分でも気づいていないことがたくさんありま
す。まだまだいろんな可能性を秘めています。自分がどんな力を持っているか、それを
教えてくれるのが友だちです。どうかそんな広い気持ちで友だちのことを考える子にな
ってほしいと思います。
 ではこれからも元気に学校生活を楽しんで下さい。もし、この手紙の感想を聞かせて
くれたらもっとうれしいです。さようなら。                          

        2015.3.6                        三輪義信