コマッタさんへの特別支援  その1

●はじめに
 Aくんは今4年生。何でも3年の時に医者から発達障害と言われ、以来すっかりやる気を無くしたと言います。
漢字も計算もぜんぜんできないと決め込んでいました。 さて、そんなAくんとの一年をメモしておきたい。

1.数の理解の作り直し
 一桁の 繰り上がり、繰り下がりもおぼつかないAくんは、数字を見るのもいや。やさしい計算練習などもはな
から拒否。鉛筆を持つのも嫌がる彼は、よほど自信を消失しているようだ。
 だったら、数の体系の一から作り直しということで、私が用
意したのは、1センチ四方の小さな木のタイル。
3ミリ厚のシナ合板をたくさん切り、いじらせると喜んで並べて
いました。 手応えを得たので、ここからは水道方式の出番。
 ご存知のように、数につまずいている子どもたちの大部分が、
十進法の数の体系がイメージできていないこと。あわよくば、
ひたすら数えるだけで、いわゆる数え主義のどつぼに陥ります。
数を量として体系づけたこの水道方式は、もっとも頼りになる
と長年確信を持って実践してきました。 数を量としてイメージ
してもらう手がかりが、こうした半具体物。正方形のタイルが
優れているのは、並べたときの拡がりと、その後の十進法との
つながりがとても分かりやすいこと。 バラの5をくっつけた5のかたまり。10にした棒。これで二桁の数が作れます。
 

百は10センチ四方の正方形になります。ここまでは、すべて板で作
ってあるので、Aくんも次々に出てくる形に興味津々。

2.大きな数
 だったら、このまま大きな数に進もうと、次は千のタイル。今度は
普段手元にある方眼紙の登場。10センチ×100センチの長い紙を用意。
バラ1000個は確かめませんでしたが、確かに100のタイルが10枚
並ぶことを確認して納得。タイルの本領発揮です。1000のタイルも何
本か用意して、四桁の数まで行き着きました。
 4年生では兆まで習うので、先は長いですが、焦りは禁物。
 さて、一万のタイルをどうするか、手持ちの新品の方眼紙はもったいないので、書き損じた図面の方眼紙を使う
ことにしました。貼り合わせが大
変でしたが、何とか1メートル四方までこ
ぎつけ、完成。 意気揚々と指導に使っ
ている相談室で広げました。このときのA
くんの歓声は忘れられません。 ただこの後
は、具体物に頼るわけにはいかず、もしも
の世界。ホーという声を出しながら大きな
数の世界を旅してみました。

 

 

 


3.単位量にも挑戦
 数の単位もあやふやだという彼の次の挑戦は、2年生で習うリットル、デシリットル。
まず1リットルの牛乳パックを用意して、次は1リットルますづくり。100のタイルと関連づ
けて1辺10センチの立方体を工作用紙で作りました。この中の水の量が1リットルというこ
とを証明したくて、ますの中にビニール袋をしき、牛乳パックからそうっと移そうとしまし
たが、途中で箱から水が漏れてきて中断。努力だけ彼に認めてもらいました。
 つぎは、デシリットルとの換算。10分の1の大きさなので4センチ×5センチ×5センチの直方体を同じく工作用
紙で作り、これが10個、1リットルますに収まればバッチリでしたが、気がつけば8個までしか入りません。残り
二つは形を変え、4センチ×10センチ×2センチの直方体に変更して完成。ただいいかげんな紙工作故、中にキッチ
リ収まるゆとりはなかったので、入るはずということで勘弁してもらいました。
 続いて重さのキログラム、グラム。これははかりを持ち出し、1リットルますの水の重さが1キログラムとほぼニ
ヤピンの世界で納得(説得?)。1000分の1の1グラム
については、デジタルの精密はかりを使い、鉛筆や消しゴ
ムなど、小さい物をたくさん測りました。